はじめに
クレヨンしんちゃんの声優が変わったことが去年話題になりましたね。
クレヨンしんちゃんは私は小学生の頃からアニメもコミックも映画も見ていて大好きな作品です。
普段あまりアニメを見たことがない人でも大人帝国の逆襲など、見たことがある映画が多いのではないでしょうか。
今回は、名作揃いのクレヨンしんちゃんの映画の中でこれはおもしろいと思った作品をランキングで発表したいと思います。
クレヨンしんちゃん映画の歴史
まず、クレヨンしんちゃんの映画の歴史は第1作目の「アクション仮面対ハイグレ魔王」から始まります。
そもそもはコミックス連載から、アニメ放送を行っていましたが、原作のストーリーは一部の例外を除いてとある一家、幼稚園児の日常を突拍子もないギャグを交えて描くギャグアニメという位置付けです。
一本の映画のストーリーの構築をするのは非常に困難を極めたという背景があったそうですが、一説によると原作者の臼井儀人先生のアイディアから映画への突破口は拓けたそうです。
それは、日常世界ではない、非日常世界へ舞台を移すこと。ハイグレ魔王、ハラマキレディース、Tバック男爵といった常人では考えつかないような魅力的なオリジナルキャラクターを登場させ、ギャグとしての体裁を保ちながらストーリーを描くということです。
臼井儀人先生はいわゆる天才肌で、映画の際の設定やキャラクターなど常人では思いつかないアイディアをどんどん生み出し、先生が参加してから会議は猛烈なスピードで進んでいったそうですね。
映画でのみ日常世界を離れた世界観でストーリーを進め主人公らの成長を描くという手法は劇場版ドラえもんでもとられている方法ですね。
ただ、クレヨンしんちゃんの場合は日常感のあるギャグ描写を残しつつ、映画独自の非日常的ストーリーラインをシームレスに織り交ぜていながら映画版クレヨンしんちゃんとしての世界観を確立したところが特異な点と言えるでしょう。
その後も毎年映画は作られていきますが、10年ほどした時に公開された映画でクレヨンしんちゃん映画は一つの転機を迎えます。
「嵐を呼ぶモーレツ大人帝国の逆襲」
「嵐を呼ぶアッパレ戦国大合戦」
という二本の映画の歴史的ヒットとその面白さです。
ただ、この二本の映画には功罪がありまして、クレヨンしんちゃんの映画は泣けるものだという認識が世の中には擦り込まれたこと、そして、それ以降に公開された映画は常にこの2作、特に大人帝国の逆襲との対比により評価をされることになったという点です。
このそもそもギャグアニメのクレヨンしんちゃんの映画を泣けるものとして認識されていることに対して伊集院光がラジオで興味深いことを話していました。
大人帝国の逆襲以降おれがちょっと気になってるのは、「大人は泣けるけどさ?」ってこと、「むしろ大人向けに作ってるよね?」って疑問がちょっと気になってるんだ。
子供のために書いた童話なんだけど大人が見ても泣けるっていうことはある、大人が見ても心打たれる。子供向けに書いたそのシンプルさが、色々濁ってしまった大人の目や心に刺さるっていうのは正しいと思う。けど、大人のための絵本っていうのは頭が悪い!って思っちゃう。
クレヨンしんちゃん映画に対する懸念点としてはこれ以上ないくらいに的を射ています。この後、伊集院光はロボとーちゃんという映画を絶賛するわけですが、それは感動的なストーリーラインに相まって途中に登場するギャグの数々が映画館の子供の爆笑をとっていて、子供を楽しませるという本義もこの作品が果たしていると感じたことからきたそうです。
もともとクレヨンしんちゃんは大人向け漫画誌に掲載されていた作品が、子供向けのアニメになったという二面性をそもそも持ち合わせている作品とも言えますね。
その後、クレヨンしんちゃんは原点回帰のギャグが多めの作品、栄光の焼肉ロードやB級グルメサバイバルでも評価を得て、ユメミーワールドやロボとーちゃんといった感動的な名作も生み出していて大人帝国の逆襲のある意味呪縛ともいえる対比構造からは抜け出しつつあるように感じます。
今回、個人的にクレヨンしんちゃんの面白いと思う映画ランキングを書きますが、このナンセンスコメディと永遠不滅の家族愛、友情愛を一つの作品にすることができることがクレヨンしんちゃん映画の最大の魅力であると考え、そのあたりの考察も少し書きたいと思います。
クレヨンしんちゃん面白いと思う映画ランキング
10位 暗黒タマタマ大追跡
クレヨンしんちゃん映画史上最強の敵と言われるヘクソンが登場する映画ですね。
この映画の魅力を一言で言うと「しんのすけの兄としての成長」です。
ひまわりが暗黒タマタマという玉を飲み込んでしまい、その玉を狙う悪の組織に追われるところからこの映画は始まります。
ひまわり登場一作目ということもあり、ひまわり主軸に物語は進むのですが、途中しんのすけが妹のひまわりのことばかり考える周りの大人たちに嫉妬した際にひろしが語りかける言葉がなんとも泣けます。
この映画の中でしんのすけが妹のひまわりを守るためにヘクソンに立ち向かうシーンがあります。
今まで、家族や大人たちに守られる側だったしんのすけが守る側になる瞬間がそこで描かれてるのです。
この映画の大きな魅力になっているのは、悪の組織からひまわりを守るために車や電車を使って関東近辺を逃げ回る逃走劇の爽快さ、その地方感の描写ですね。
また、敵のキャラクターも非常に魅力的です。健康ランドというスーパー銭湯で、敵との銃撃戦をする際に野原ひろしが偶然取引先の人と出会い挨拶をするというシーンがあるのですが、その際の敵の一言がとても面白いです。
撃ったらあきません。名刺交換はサラリーマンの神聖な儀式や。終わるまで手を出したらいけません。
実際にひろしが名刺交換をする様がスローモーションで描かれて、渡し終わった瞬間に銃撃戦を始めるという演出がこの後に入るのですが、緊迫したシーンの中でこうした一言で笑いをしっかりいれるところは実にクレヨンしんちゃんらしくて痛快ですね。
9位 嵐を呼ぶジャングル
この映画の魅力を一言でいうと「ヒーローとしての期待と重圧」です
しんちゃんはナンパやお下品なことが好きですが、弱いものに寄り添ったり悪に立ち向かったりする真っ直ぐさも併せ持っています。
その背景には、アクション仮面やガンダムロボといったヒーローものが好きであり、ヒーローへの憧れを持つ純粋さがあるのです。
そんなしんのすけにとって憧れの存在、アクション仮面を軸に話は進みます。
これまでもアクション仮面は強力な見方として映画に度々登場していましたが、この作品の最大の特徴は、架空の世界のアクション仮面ではなく、それを演じている俳優の郷剛太郎の立場で描かれていることです。
途中、敵のパラダイスキングと拉致された郷剛太郎が一対一で戦うシーンがあるのですが、その際に郷剛太郎はアクション仮面の格好をして、過去に会得した格闘技の数々を話すシーンがあります。
その後、パラダイスキングにアクション仮面はボコボコにやられてしまいます。
この映画で最も感動的なのは大人たち、子供たちがアクション仮面に声援を送ることでアクション仮面、郷剛太郎が奮起をするところでしょう。
スクリーンのなかでの架空のキャラクターとしてではなく、彼は1人の郷剛太郎という男としてその声援を受け止め、期待に応えるために自分を奮い立たせ悪に立ち向かいます。
架空のキャラクターとしてのヒーローの枠を超えて、本当の意味でのヒーローになる瞬間がやってくるわけですね。
この映画は最後のしんのすけ一家のセリフも印象的です。
ひろし「しんのすけ、大きくなったらアクション仮面みたいになれよ」
しんのすけ「そしたらモテる?」
みさえ「当たり前でしょ!モテモテよ!」
しんのすけ「おぉ〜!オラなる!」
この映画の終わり方としてはこれ以上ない着地ですし、それをいかにもしんちゃんらしい言い方で言わせて幕を閉じるというのがとてもスマートです。
EDの小林幸子の「さよならありがとう」も名曲ですね。
8位 栄光のヤキニクロード
この映画の魅力を一言で言うと「クレヨンしんちゃん映画とは」です。
この映画が公開された背景は、前年にアッパレ戦国大合戦、前々年に大人帝国の逆襲が公開され、世の中のクレヨンしんちゃんへの注目度と期待度がとても高かったことです。
この二作品はクレヨンしんちゃんの映画の市場価値を急速に高めましたが、同時に本来ギャグ漫画であるクレヨンしんちゃんに対し、クレヨンしんちゃん映画は泣けるものが素晴らしいという考えを根深く植え付けてしまったという功罪をあわせもっています。
その中で公開されたこの作品はそんな期待を吹き飛ばすほど、潔いほどにギャグテイストにふりきってる作品です。
ヤキニクを家族で食べたいという目的のために一本の映画を通して野原一家が気持ち良いほどにバカバカしく春日部を熱海を駆け回ります。
クレヨンしんちゃん映画における原点回帰となった名作です。
大人帝国の逆襲、アッパレ戦国大合戦の後の作品という日本の後にあえてギャグに振り切った作品を作ったのも製作者の心意気が感じられていいですね。
個人的に好きなのは最後にさりげなく入るこのシーンですね。
手前左の男性はこの作品のギャグとして非常にいい味を出したキャラクターなのですが、平和なラストシーンのなかに少しさりげない別れの切なさがはいるシーンです。
この映画のラストは日常アニメのクレヨンしんちゃんとしてはこれ以上ない平和な着地ですね。
7位 夕陽のカスカベボーイズ
この映画の魅力を一言で言うと「しんのすけの初恋」です。
しんちゃんはナンパが大好きですがその相手はいつもななこお姉さんをはじめとした成熟したキレイなお姉さんです。
ところが、この映画の作中にしんちゃんは自分よりも少し年上の素朴な少女に恋をします。
映画の世界の中で、しんちゃんはひたすら雫を助けるために動き、巨大な悪のロボットとも戦います。
そんなしんちゃんの初恋はとある結末を迎えるのですが、
この映画の白眉となるのはエンディングだと考えます。
NO PLANの○あげようにのせてしんのすけと椿の2人が楽しそうに踊っている映像のエンディングです。
他に誰も出てこない、2人だけのエンディングなのですが、椿の目線まで上がって幸せそうに踊るしんのすけと靴を履いている椿の素朴な雰囲気がなんとも感動できるものになっています。
椿ちゃんは作中は悪いお金持ちの召使いとして働いていて靴を履いていません。途中、しんのすけに靴をはける様になるのが夢だと語るシーンがあります。
映画の作中での2人の夢がエンディングで成就するのです。
この他にも春日部防衛隊の結束や西部劇での面白い展開の数々など見所溢れる映画になっています。
6位 逆襲のロボとーちゃん
この映画は父権の復興を掲げる悪の組織チチユレ同盟とロボとーちゃん、しんのすけ、野原一家、春日部防衛隊の戦いを描いたものです。
その中で「父親とは」「ロボットとは」というテーマを見てる人に強く投げかけます。
これまでの映画やアニメの活躍からある種のブランドといって良いほどの人気を誇る父としての野原ひろしにフォーカスした作品ですね。
まず、この作品は参加しているスタッフに過去にクレヨンしんちゃんに関わっていたレジェンドが集められています。
特に、絵コンテに湯浅政明さんが携わっているのがすごいですね。
ロボットにされてしまったヒロシという設定で親子愛や家族との思い、ロボットとしてのアイデンティティといったかなり深いテーマな作品になっています。
この映画はみさえの心理描写が非常に細かく描かれているのもクレヨンしんちゃんの中ではめずらしくて良いですね。
ロボットになったというギミックを使って日常アニメのクレヨンしんちゃんでは絶対に描けないとある結末が間接的ではありますが描かれます。
野原ひろしの魅力がたっぷり詰まった作品になっていますし、合間にあるギャグもしっかり効いてる名作です。
5位 ユメミーワールド
この映画は春日部防衛隊が大活躍、特にしんのすけの主人公としての格好良さが強く描かれた作品です。
夢の中と現実世界が交差する世界観なのですが、クレヨンしんちゃんにはめずらしく異世界や異国の描写がそこまで強くなく、比較的最後まで春日部の日常世界をベースに物語が進みます。
映画のみのキャラクターも基本的には2人しかいなく、オリジナルキャラがしっかり描かれます。
クレヨンしんちゃん映画は野原ひろし、マサオ君、風間君といった男性キャラに主軸があることが多いですが、この映画はネネちゃんとみさえの活躍が目覚ましいです。
夢の中というシンプルな設定から冒険活劇を描き、友情や親子愛といったテーマを面白く描いたことから上位にしました。
個人的には好きなのは途中で転校してきた謎の少女サキちゃんがお父さんの作った朝食を食べるシーンです。
お父さんが焼いたパンは焦げていますが、何も言わずに黙って食べます。
この映画はサキちゃんがお母さんを亡くしたことが重要なテーマになっていますが、母親のいない寂しさや父と娘のどこか切ない関係性がさりげないワンシーンでしっかりと伝わってきます。
EDの友よという曲も名曲ですね。
夢でまた会おうという素晴らしいセリフで幕を引くのも実に粋に感じます。
4位 アッパレ戦国大合戦
この映画の魅力を語る上で欠かせないのはクレヨンしんちゃんの映画ながら非常に緻密な戦国の合戦、戦闘描写を描いた本格的合戦映画になっていることですね。
突然タイムスリップをしたしんちゃん、それを追ってタイムスリップをした野原一家。戦国時代の春日国で、とある戦争に巻き込まれることになります。
家族間の絆と共に、しんのすけと武士又兵衛との約束、又兵衛との姫の身分違いの恋など、色々なテーマが重なり合った素晴らしい映画になっています。
最後には、迫力満点の殺陣、カーチェイスなどアクションシーンもとても面白いです。
一見シリアスな戦争描写、負けると分かっていながら国のために戦う侍達の矜持を描いていますが、最後の最後の戦いのシーンで野原ひろしが刀と間違えて健康器具を握って戦いに向かってしまうなど、シリアスな中でも質の高いギャグを織り交ぜるのがなんともクレヨンしんちゃんらしいです。
非常に良質なストーリー、世界観の映画で普及の名作との呼び声が高いですが、ベストスリーに入らなかった要素はラストシーンのしんのすけの泣き顔です。
元々双葉社にいて、クレヨンしんちゃん映画の脚本を書いた中島かずきさんのインタビューを読んだことがあるのですが、臼井儀人先生はこのように語っていたことがあるそうです。
しんのすけは真正面から笑わない。ハードボイルドなんですよ
しんのすけというキャラクター像の中でこのハードボイルドという言葉はとても重く感じます。
感情を表に表さず、行動によってします力強さをもった強さを確かにしんのすけには感じますね。
ちなみに前述したカスカベボーイズのEDでつばきちゃんと踊っている際もしんちゃんは正面を向いているときは照れているような緊張しているような表情ですが、カメラワークが横顔になった途端に笑顔になるというしんのすけの表面と深層的な感情をうまく使い分けて演出していました。
映画としてのピークの際に、しんちゃんの泣き顔を正面から写すという演出には個人的には少し思うことがあったのが事実です。
ただ、引き込まれる様なストーリー、クライマックスの盛り上がりなど総合的にとても面白い傑作であることは間違いなく、トータルで4位とさせて頂きました。
3位 ヘンダーランドの大冒険
この映画の魅力を一言で言うと「しんのすけの自立と成長」です。
ヘンダーランドという遊園地でしんちゃんがトッペマという女の子に出会うことから物語は始まります。
その後、スゲーナスゴイデスと呪文を唱えれば魔法が使えるようになるトランプをしんのすけが手にし、それを狙う悪者スノーマンという雪だるまが幼稚園の先生となりしんのすけに近づいたり、マカオとジョマというオカマ魔女の手下がしんのすけに迫ります。
この映画最大の肝は何気ない幼稚園や家の中に悪の組織がさりげなく迫ってくる日常の中に潜む恐怖を見事に描いていることと、その事実はしんのすけと夜にしか動けないトッペマというキャラクターのみに共有をされているということです。
事実、幼稚園の先生、友達、そして野原一家すらも悪者のスノーマンのことを良い先生と言って疑わず、しんのすけの話にも耳を傾けないというシーンが前半は続きます。
この映画は途中まで、春日部防衛隊や野原一家といった仲間と一緒ではないしんのすけの1人での闘いが描かれているのです。
家族が悪者に連れ去られてしまったしんちゃんは家の中で魔法のトランプを持ち、たった1人でスノーマンという悪者と対峙することになるのですが、その時にしんちゃんがとった行動が自分の憧れの、そして自分が描いたヒーローを魔法の力で呼び出すというものでした。
ここのシーンはしんちゃんの幼稚園児としての寄る辺なさを描きつつ、家族がいなくなっても戦おうとするしんちゃんの強さも併せて描いているとても良いシーンですね。
その後、しんちゃんが1人で電車に乗り、ヒッチハイクをして敵のいるヘンダーランドに向かっていくシーンをじっくり描いているのも感動的です。
この後の作品で、しんのすけは前述した通りひまわりという妹を守るために更に成長していくのですが、家族を守るために1人でも戦いに行くしんのすけの成長をあくまで幼稚園児としてのスケール感は壊さずに丁寧に描いているところにとても感情移入できます。
この映画はクライマックスに悪役との鬼ごっこ、逃走劇的演出があるのですが、個人的にはクレヨンしんちゃん映画のギャグシーンの瞬間最大風速はここだと思います。
2位 ブタのヒヅメ大作戦
この映画の魅力を一言で言うと「自分にとってのヒーロー」です。
しんのすけたち春日部防衛隊が幼稚園の旅行中にブタのヒヅメという悪の組織の怪しい飛行船に拉致をされてしまうところから物語は始まります。
そこで、悪の組織のコンピューターウイルスを使った世界征服計画を知るのですがそのウイルスの姿は、なんとしんのすけの創作した救いのヒーローぶりぶりざえもんの姿をしていました。
しんのすけの落書きを偶然見つけた博士が、開発したというのが理由です。
ぶりぶりざえもんはしんのすけにとっては自分の友達であり世界を救うヒーローとして描いたものです。
そのぶりぶりざえもんが悪の組織のもとで、核兵器で世界を滅ぼそうとしているというとても悲劇的な展開がしんのすけを襲うのです。
この映画は世界の平和を守る組織SMLのキャラクターと悪の組織ブタのヒヅメ、そして対照的にそれぞれのもとにいるしんのすけとぶりぶりざえもんという正義と悪の対立構造がストーリーラインになっているのが特徴的です。
この映画最大の山場はしんのすけが書いた絵本の物語の朗読、ぶりぶりざえもんの冒険でしょう。
山の頂上での2人の会話、ぶりぶりざえもんがさりげなくとある悲しい結末を悟ってしまうシーンがとても切ないです。
山の頂上での2人の会話は感情的になりすぎることや、泣かせ演出に振りすぎることなく、とてもハードボイルドで大人な演出になっています。
ここで、しんのすけの涙を横顔にマスクを被せたまま。シーンとしてはほんの一瞬さりげなく見せるというのが粋でいいですね。
この映画は爆発する的のアジトからしんちゃんたちを乗せた飛行船がなかなか飛び立てないというシーンでクライマックスを迎えるのですが、そこでのしんちゃん達の脱出劇がとても感動的です。
救いのヒーローぶりぶりざえもんが本当の意味でしんのすけのとってのヒーローとなる瞬間がそこで描かれるわけですね。
1位 オトナ帝国の逆襲
やはりこの作品が1位ですね。
ストーリー、舞台設定、音楽、キャラクター、構成どこをとっても完璧なクレヨンしんちゃんの映画の枠を越えて日本の邦画史上でも最高レベルの傑作だと思っています。
この作品は後半の野原一家の活躍、特に野原ひろしが過去の回想をし、未来を生きていくかの葛藤から家族を守るという心理描写の素晴らしさはもはや語る必要がありませんね。しんのすけの未来を生きるための意志についても同様です。
個人的には後半への渡しとして前半の春日部防衛隊の活躍、カーチェイスといったアクションそしてなにより大人からの逃走の時のドタバタギャグ描写の面白さもピカ一だと思います。
前半のギャグの面白さが秀逸で、後半にエモーションが揺さぶられる感動的なシーンの数々が畳み掛けてきて、見終わった後の充実感が半端じゃないです。
途中の劇中歌もとても良いですね。特に吉田拓郎の「今日までそして明日から」はタイトルも歌詞も作品のテーマと完全にリンクしています。
この映画は野原ひろしの活躍が目覚ましく、この映画と以前と以降で野原ひろしの市場価格を激変させたといっても過言ではないでしょう。
子供の頃に戻ってしまった野原ひろしが現実に戻るきっかけが足の臭いという発想がすごいと思います。
途中、回想シーンが入るのですが仕事をしていたり、家路につくために歩いているひろしを映す際に歩いている足のカットから何度も入るんですよね。
ひろしの足の臭いは原作でもよくネタにされるものですが、そんなギャグのネタであった足の臭いをひろしが家族を守るために頑張ってきた象徴として過去から現在、そして未来に戻すためのギミックに使うという発想に脱帽します。
悪役のケンとチャコもとても魅力的ですね。敵の組織名「yesterday once more」という名前と敵の提示する世界観も非常に魅力的なものになっています。
さいごに
皆さんの好きな映画は何位だったでしょうか?
クレヨンしんちゃんの映画は名作がとても多いのでベストテンでも足りないくらいでしたね。
特に、春日部防衛隊のシンプルな冒険とギャグが面白い「B級グルメサバイバル」
吹雪丸といった魅力的なキャラクターが登場し、クライマックスで迫力満点のロボット大戦を描いた「雲黒斎の野望」
序盤の感動的なシーンで心を一気にもっていかれる「オラの引越し物語」
などは、ランキングにかなり迷いました。
特に最近のクレヨンしんちゃん映画は原点回帰に面白いギャグやキャラクターの活躍をたくさんいれたり、新しい切り口の題材にしたりととても面白いものが増えていますね。
原作者が亡くなり、声優さんも変わっていくクレヨンしんちゃんですが、これからも名作がたくさん生まれていくのがとても楽しみです。
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