M-1グランプリ2019で大活躍!
ぺこぱはツッコミ担当の松陰寺太勇(しょういんじ たいゆう)とボケ担当のシュウペイによって2008年に結成されたコンビです。
結成から10数年の間、なかなか日の目を見ないコンビでしたが、2019年はじめの「おもしろ荘」で優勝し、徐々に注目を集めていました。
そして、2019年末のM-1グランプリでは最終ラウンドまで進出し、3位になるという結果を残してから、各所でぺこぱの漫才を絶賛する声が上がっています。
ぺこぱが10組目に最後の出番で登場し、その時点で3位だった和牛の点数を超えた瞬間は、2019年のM-1の最も盛り上がった瞬間の1つでした。
プロの芸人が絶賛!
ぺこぱのネタは見ている人の意表を突く斬新さを持っており、誰が見ても面白いものですが、特に同業者である芸人の間でぺこぱのネタのシステムの評価が高いです。
オードリーの若林正恭は自身のラジオ番組内で、ぺこぱの漫才を観て涙を流すほど笑ったとし、次のように話しています。
「こんなウルトラCがあるんだって。笑い飯さんを初めて見た時とか、(南海キャンディーズの)山ちゃんのツッコミを見た時とかに匹敵するぐらい、腰が抜けたかも。ものすごい発明だよ」
また、松本人志もM-1グランプリの番組内で「ノリ突っ込まない漫才」として、ぺこぱの新しい漫才スタイルを高く評価しています。
ぺこぱの漫才の仕組み
ぺこぱの漫才が通常の漫才と異なる点は、ツッコミがボケに対して突っ込むと見せかけて、突っ込まずに肯定するという1点です。
例えば、M-1で見せた「タクシー」のネタでは、シュウペイが演じるタクシーの運転手が突如ブレーキを踏み休憩を取るというボケに対し、松陰寺は普通に「休憩するな!」と突っ込むと見せかけて「休憩・・・は取ろう!」とボケを肯定します。
普通はタクシーの運転手が休憩を取ると、客は怒るべきですが、逆に休憩の大事さを訴えるという点が非常に斬新です。
このように、普通に突っ込むと見せかけて突っ込まないというのが、ぺこぱの基本的な漫才スタイルです。
面白さの分析
そもそも、観客が漫才を観て面白いと感じるのは、期待・予想を裏切られた時です。
「こんなこと思いつかなかった」「予想と違う発言がきた」と感じた時、人は面白いと感じます。
タクシーの運転手が休憩を取る、という先ほどの例を使って、通常の漫才とぺこぱの漫才の違いを考えてみます。
通常の漫才の場合、タクシーのシチュエーションを演じた時点で、観客は無意識に「タクシーの運転手は真っすぐ目的地に向かうはずだ」という前提を持ちます。
そこで、運転手が休憩を取るという予想の裏切りをし、ツッコミがそれを訂正することで面白さが生まれます。
一方、ぺこぱの漫才では、運転手が休憩を取るという予想の裏切りに加え、観客が無意識に持っている「ボケの後にはツッコミが来るだろう」というメタな次元での予想も裏切ります。
この仕組みを使うことで、通常の漫才の倍、観客の予想を裏切ることができるのです。
そしてこの手法は相手が漫才について詳しければ詳しいほど効果を発揮します。
漫才のプロやお笑い好きな人間は、普通の人よりも遥かに多くの漫才を観てきています。
そのため、 嫌でもボケ⇒ツッコミという流れが無意識に刷り込まれていきます。
その状態でぺこぱの突っ込まない漫才を観ると、普通の観客よりも強く「予想を裏切られた!」という印象を受けます。
漫才の中身で予想を裏切るのではなく、漫才の構造に対しての予想を裏切るという新しさこそが、プロの芸人がぺこぱのスタイルを絶賛した理由なのです。
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