ハライチというコンビ
ハライチはツッコミ担当の岩井勇気とボケ担当の澤部佑によって2005年に結成されたコンビです。
2009年にM-1グランプリの決勝に進出して以降、4大会連続で決勝に進出しており、その実力は誰もが認めています。
ネタ作りをしているのは岩井で、ハライチのブレーンは岩井だと言えます。
メディアに露出するきっかけとなった「ノリボケ漫才」という新しいスタイルを若くして発明したことからも、素晴らしい才能の持ち主であることがわかります。
しかし、バラエティ番組に呼ばれ、世間の人気者になったのは岩井ではなく、澤部の方でした。
次第に岩井は「じゃない方芸人」のレッテルを貼られ、ハライチの「澤部じゃない方」として不遇な扱いを受けていきます。
なぜ澤部はバラエティで重宝されるのか
岩井は著書『僕の人生には事件が起きない』にて、澤部がバラエティで人気な理由をこう分析しています。
今のテレビのバラエティ番組において、ハライチのどちらを使うかと聞かれたら9割が澤部と答えるはずだ。僕が番組を作っていても恐らく澤部を使っている。あの頃の漫才のスタイルから言っても澤部が目立つように作られているし、なんだかんだで明るくて元気に振る舞える人間の方がテレビ向きである。
岩井勇気『僕の人生には事件が起きない』
澤部は明るく元気な見た目であり好感度が高く、誰から見ても「楽しい」印象を与える存在です。
松本人志が語る面白い芸人の条件の1つである「根暗」とは真逆の特徴をですが、バラエティ芸人としては大成功していると言えます。
しかし、岩井は澤部がやっていることは何か新しい笑いを生み出しているのではなく、既にある面白いものをもっと面白く見せているだけだと評価しています。
つまり澤部は0から1を生み出しているのではなく、1を100にする能力が秀でているのです。
岩井は澤部と真逆の存在
それに対して、岩井は漫才のネタを考えたり、新しいシステムの漫才を考案するのを得意としている一方、バラエティ番組で明るく楽しそうに振る舞うことを苦手としています。(もしくは故意に行っていません)
澤部とは真逆で、0から1の笑いを生み出す能力に秀でていると言えます。
この意味で、ハライチは岩井が無から笑いを創造し、澤部がその笑いを膨らませる、という役割分担がキレイに行われている理想的なコンビだと言えます。
澤部の正体は?
さて、バラエティ番組で理想的な立ち振る舞いができる澤部はどういった人間なのでしょうか。
岩井は『僕の人生には事件が起きない』で、澤部という人間についてこう語っています。
澤部は誰かがやっていたことを吸収して、自分を通してアウトプットするのがとにかく上手いのだ。(中略)そう、澤部には実態がいないのだ。(中略)だが、実は僕はそれも強みなんじゃないかと思っている。例えばバラエティ番組での振る舞いも、「こうすれば観ている人に印象が良い」「これは絶対盛り上がる鉄板フレーズだ」とわかっているのに、芸人は素直にその通りにできなかったりする。どこかにオリジナリティを求めてしまい、”自分らしさ”を入れてしまいたくなるからだ。しかし、澤部は”無”なので、他の番組で観て良いと思ったことを100パーセント実行に移せる。自分を押し通すということは不便なものであって、それを全くしない澤部は毎回、平均点以上を叩き出し、総合点で1位をとるのだ。最強のバラエティ芸人である。
岩井勇気『僕の人生には事件が起きない』
つまり、澤部自身は中身が空っぽの人間で、他の人が良いと評価したものをどんどん吸収し、それをそのまま実行するのが得意なのです。
テレビで明るく振る舞うバラエティの人気者の正体は実は「無」だったのです。
当然それが悪いという訳ではなく、「無」というのも魅力的な個性の1つで、誰にでも真似ができるものではありません。
中身が空洞で1を100にする天才である澤部と、0を1にする天才である岩井のコンビ「ハライチ」の活躍は今後も楽しみですね。
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